規格・規制

Q.FDA 21CFR 178.3570は、いつ規定されたのか?

A.FDA 21CFR 178.3570とは、FDA(Food and Drug Administration、米国の食品医薬品局)によるCode of Federal Regulation(CFR、米連邦法規則集)の第21条、Part 178、Section 3570という意味です。この規則で「Lubricants with incidental food contact」(食品と偶発的接触のある潤滑剤)について規定されています。

1977年5月15日より施行され、ほぼ毎年改定が行われています。 現在の米国における食品添加物関連の法律は、1938年に制定された連邦食品医薬品化粧品法(Federal Food, Drug and Cosmetic Act)がその基礎となっており、食品添加物に関して,1958年に大幅な改正が実施されています。
同法を実際に各州で施行する上で、米連邦全体に効力をもつ法規集がCFR(Code of Federal Register)と呼ばれ、より細かな施行規則が定められています。

TITLE 21 : FOOD AND DRUGS
PART 178 : INDIRECT FOOD ADDITIVES: ADJUVANTS, PRODUCTION AIDS, AND SANITIZERS
Sec. 178.3570 : Lubricants with incidental food contact.

Q.USDA H1って何?

A.USDA(United States Department of Agriculture)は米国農務省のことです。潤滑剤を以下の2つのカテゴリーに分類し、条件を満たす潤滑剤の認証を行っていました。

・USDA H1「偶発的に食品に触れる可能性がある箇所で使用できる潤滑剤」

・USDA H2「食品に触れる可能性がない箇所でのみ使用できる潤滑剤」

1999年以降は、NSF(National Sanitation Foundation、現在のNSFインターナショナル)がこれらの業務を引き継ぎ、NSF H1、NSF H2として登録・リスト化などの管理を行っています。

なお、かつてのUSDA H1認証製品、及びNSF H1登録製品も、最新の規格要求から外れ、抹消されている可能性があります。
常に、最新の登録状況を確認する必要があります。(NSFのWebサイトで「White Book™ - Nonfood Compounds Listing Directory」を確認してください。)

Q.NSF H1って何?

A.現在は、NSF(National Sanitation Foundation、現在のNSF International)が、食品グレード潤滑剤、食品機械用潤滑剤についての規格を登録、管理、リスト化を行っています。

現在は、非食品化合物(Nonfood compounds)のうち、潤滑剤について3つのカテゴリーに分類。熱媒体について2つのカテゴリーに分類しています。

・NSF H1 「偶発的に食品に触れる可能性がある箇所で使用できる潤滑剤」
原材料は、FDAが規定する 21CFR 178.3570に記載された物質を主に使用できる。FDAが規定した物質のみが使用できる。

・NSF H2 「食品に触れる可能性がない箇所でのみ使用できる潤滑剤」
一般的に使用されている物質はほとんどの場合使用可能であるが、NSFにより、発がん性物質・変異原性物質・催奇形性物質・鉱酸・臭気物質等に分類される物質など潜在的なリスクを考慮し除外される物質は使用できない。

・NSF H3 「可溶性の潤滑剤」
食肉工場などに多いトロリーやフックの防錆剤として使用する。コーン油・綿実油・大豆油などの食用油やホワイトミネラルオイル(流動パラフィン)などが使用できる。

・NSF HT1 「偶発的に食品に触れる可能性がある箇所で使用できる熱媒体」
使用条件、使用可能な原材料はNSF H1に準ずる

・NSF HT2 「食品に触れる可能性がない箇所でのみ使用できる熱媒体」
使用条件、使用可能な原材料はNSF H2に準ずる

食品製造現場において、機械設備が要求する潤滑性能を適えつつ、高い安全性も有している製品が、NSF H1登録製品です。

Q.日本国内の規格はありますか?

A.日本では、現在までのところ、食品製造現場で使用する潤滑剤について規格や規則・規準はありません。
また、食品衛生法などの法律においても潤滑剤の安全性や、使用制限など規則はありません。

ただし、米国はもちろん、欧州など日本以外の先進国では、食品グレード潤滑剤、安全な食品機械用潤滑剤の使用を法制化あるいは、ルールとしており、NSF H1・HT1登録製品が活用されています。

また、各種HACCPなど食品安全の管理手法の実行、GFSI承認スキーム(FSSC22000など)やISO22000など食品安全マネジメントシステムの前提条件で、その使用が求められる場合も、NSF H1・HT1登録製品が使用が適用・認められます。

Q.今、FDA認証製品を使っているから大丈夫?

A.FDAは認証をするのではなく、あくまで安全な食品機械用潤滑剤に使用可能な「原材料」を「規定」するだけです。 認証を行うのはNSF だけで、NSF H1の認証を受けて初めて客観的に「FDAが規定した成分(材料)のみを使用して製造された安全な潤滑剤」である証明になります。

一度、現在お使いの潤滑剤メーカにH1認証品かどうか確認されることをお薦めいたします。

Q.流動パラフィンを使っているから大丈夫?

A.流動パラフィンは、日本の食品衛生法上では、「パンのデバイダー油(離型剤)」としてのみ使用が許可され、用途と残留濃度が規定されているのをご存知でしょうか?
その他の用途での明確な日本での法的保護は、ありません。 また、潤滑性能に満足されていますか?

Q.HACCPってなに?

A.HACCP(ハシップ、ハセップ、ハサップ、エイチエーシシピーどれでも良い)は、2つのもので構成されています。HA は、ハザード・アナリシスで、「危害分析」。CCPは、クリティカル・コントロール・ポイントで、「重要管理点」。まず、どのような食品の危害があるかを分析します。 そして、その危害を防止するために、重要なチェックポイントを決めて、徹底的にそのポイントを管理し、食品の危害が出ないようするシステムです。
日本でも厚生省が乳製品/水産加工品/肉製品の三分野に加え、清涼飲料水の分野でもの認証制度を開始し、現在ではほとんどの大手該当企業が認証を取得しています。

Q.HACCPと潤滑剤の関係は?

A.HACCPシステムの中で、潤滑剤は「化学的危害」に分類されており、食品への混入を管理すべき一要素になっています。

Q."EC Directive 93/43/EEC"って何?

A.通称「HACCP指令」と呼ばれている、欧州でHACCP導入推進を決めたEC指令です。

Q."EHEDG CEN/TC 153/N79E"って何?

A.欧州衛生的装置設計組合(European Hygienic Equipment Design Group, 略してEHEDG)が食品加工機器の設計、据え付け、洗浄等のメンテナンスについて行っている勧告。この機関設置は、1989年6月14日付けでEC機械指令を公布(1995年1月1日)したのがきっかけとされています。
ヨーロッパにあっては、ドイツ、イタリア、英国、フランス、スウェーデンなどもともと食品や飲料の加工包装機械を世界市場に展開しており、こうした研究組合を結成して、次世代の機械・装置を先取りした開発に取り組んでいます。
この勧告の中で、潤滑剤についても規定しており、「FDAの規則(とくにFood Drug Cosmetic Law Reports §178,3570)に適合したグリースおよび潤滑油であることが要求される」すなわちNSF H1製品の使用を薦めています。

商品・技術・安全衛生

Q.「カシーダ」ってなに?(どんな意味?)

A.シェルの潤滑剤は、会社の社名・トレードマークの「貝殻」に関連付けて、歴史的にそのブランド名に貝(殻)の名前を与えてきました。 聞かれたことがあるかと思いますが、アルバニヤグリースや、油圧作動油のテラスオイルなども貝の名前に由来しています。
「カシーダ」もある種の貝の名前で、「巻き貝」の一種の学名です。

Q.カシーダっていつから発売されているの?

A.日本では、98年7月から弊社が正規販売を開始しています。 海外のShellオペレーティングカンパニーでは94年頃から販売されており、日本が最後の発売国となりました。

Q.今使っているオイル(普通の工業用潤滑剤)と混じってしまうと、H1の意味がないのでは?

A.おっしゃる通りです。 折角厳選された安全な材料のみで製造されたH1グレード商品も他の潤滑剤と混合してしまっては全く意味がありません。
一般工業用潤滑油からH1油に変更する場合は、使用油を抜き取り後、十分にH1油でフラッシングを行い、これを抜き取り後、新しいH1油を張込むといった、可能な限り前使用油のコンタミネーションを避ける交換作業が必要です。 グリースの場合にも全く同じことが言えます。
コンタミネーション有無の確認は、オイルの分析で判定可能な場合がありますのでご相談ください。

Q.どんな会社で使っているの?(実績は?)

A.カシーダは、海外では1993-94年頃から販売されており、 欧州を中心に、グローバルな食品メーカであるKraft Jakobs社(総合食品), Heinz社(ケチャップ・缶詰), Coca-Cola社(清涼飲料), Unilever(総合食品), Heineken社(ビール), Nestle社(嗜好飲料等)など大手食品メーカで使用され厚い信頼を頂いています。
日本でも98年7月から発売され、大手ビール・清涼飲料メーカ・ボトラー様や、製パン・菓子メーカ様にもすでにご使用頂き高い評価を頂いております。

Q.導入が一番進んでいるのはどこの国(企業)なの?

A.日本以外の先進国では、米国はもちろん、カナダ・欧州・豪州ともNSF H1の規準が食品機械用潤滑剤の安全基準として広く認知されています。
また、企業では、様々な国で活躍するグローバルプレーヤー(ケロッグ、ネスレ、ハインツなど)が各国でのリスク管理の一環としてNSF H1潤滑剤を積極的に導入しています。

Q.食品にどのぐらい混入しても安全なの?

A.最初に考えて頂きたいのは、たとえ、NSF H1登録潤滑剤でも基本は潤滑剤であって「食品」ではありません。 従って「混入しても大丈夫」と考えて頂くのではなく、「混入しない」為の最大限の努力(対策)をして頂くことが潤滑関連の安全対策のファーストステップです。
このような対策を取ってまず混入のリスクを最小限化し、さらに「もしも」の場合に備えてNSF H1登録潤滑剤を採用するのが最も好ましい対応です。

Q.食品にどのぐらい混入したか、検出できるの?

A.食品の種類にもよりますが、基本的には、食品に混入した潤滑剤の検出は非常に困難です。 様々な機器分析装置(IR,ガスクロ,NMR,マススペクトル など)を使用しても食品に残留する僅かな量の潤滑剤を検出・特定することは事実上不可能といってもいいでしょう。
但し、当然ながら「検出できないから」良いというものではなく、もし、一般潤滑剤を使用していて、その混入が疑われた場合、食品メーカーは「絶対に混入していない」ことを明確に「証明」する必要があります。 これもまた非常に難しい問題です。
一方、H1潤滑剤であれば「万が一混入しても安全」なことが証明されています。
検出・証明が難しいからこそ、H1潤滑剤を使用することで、「混入しないよう対策をとっており、さらに万が一混入しても安全」とお客様に説明することにより、納得を得る事が出来ると考えます。

Q.カシーダは長期(慢性)毒性もないの?

A.「カシーダ」に使用されている基油・添加剤すべての物質は、FDAの規準に従えば、無害であることが確認されています。 各物質の急性/慢性毒性、発がん性、催奇形性等の各種毒性・病理試験は、FDAに登録される際にすべて明らかにされています。

Q.植物油との違いは?

A.よく食品機械の潤滑に使用されている植物油(ナタネ油など)は、もちろん食品ですので安全ですが、潤滑剤としては、耐久性(寿命)に問題があります。 植物油は潤滑性が優れていますが天然素材であるため熱・酸化安定性に劣り、すぐ真っ黒に変色/変質してしまう現象が見られます。
カシーダは安全性も確保しながら、熱・酸化安定性も一般の工業用潤滑剤以上に優れています。

Q.流動パラフィンとの違いは?

A.流動パラフィンは、日本の食品衛生法で「パンのデバイダー油(離型剤)」として広く認知されており、食品機械にも潤滑油として良く使用されています。
但し、添加剤が一切入っていないため、一般の工業用潤滑剤と比較すると、潤滑性能がはるかに劣ります。 カシーダは安全性も確保しながら、各種の添加剤を配合し、油圧・ギヤ・チェーン等様々な用途で最大の潤滑性能を発揮できるよう設計されており、大切な機械を確実に守ります。

Q.カシーダも使ったら黒くなるでしょ? 使って黒くなったオイルが混入したら何でも同じでしょ?

A.基本的にオイルが極端に劣化しないように管理するとともに、混入しないように対策を取ることがが大前提です。 カシーダも使用期間により、色が濃くなりますが、植物油や通常の潤滑剤に比べれば程度は非常に軽微です。
また、仮に黒くなったものが混入した場合、もともと「安全な潤滑剤」が混入した場合、と「良く判らない潤滑剤」が混入したという場合では、当然ながらお客様の反応も変わってくると思います。

Q.殺菌作用はあるの? 殺菌剤が入ったオイルが欲しい/使っているのだけど・・?

A.カシーダには、殺菌剤は配合していません。 これは、殺菌剤を使用すると、その殺菌剤に耐性を持つ他の菌が次に発生/繁殖することに繋がる(抗生物質と一緒)からです。
菌が繁殖するには、ある条件が必要で、潤滑油の場合、水分がその鍵を握っています。
潤滑油自身はもともと好菌性(菌が繁殖しやすい)のものではなく、こうした水分が入らないように管理することで菌の繁殖が防げます。